2014/02/04

カーニバル11号[主張]

籾井NHK会長は辞任せよ! 安倍政権を撃つ2・11行動へ

  なんと言えばいいのか、実にひどい事態が進行している。
 NHK新会長に就任した籾井勝人が、就任会見で「慰安婦はどこの国にもあった」「日韓条約で解決済み」などと述べた件だ。
 会長人事は経営委員会の任免権によるが、この経営委員に、百田尚樹や長谷川三千子などといった安倍の「お友だち」が、「官邸の意向」で昨年一一月に選出(経営委員は国会同意人事)されてから、NHKが政府自民党の宣伝機関化するのではないかという危惧が強まり、事実、現場の「萎縮」を思わせるような事態も見え始めてきた矢先だった。
 籾井新会長自身は安倍と直接の面識はないらしいが、発言内容から明らかなように、安倍の歴史認識ときわめて親和的な人物であることは間違いない。すでに多くの批判が出ているように、こうした右翼偏向の歴史観を堂々と披瀝するような「中立性」のなさ、「公共放送」の「公共」イコール日本政府の立場であるかのような認識(「政府が『右』と言っているものを、われわれが『左』と言うわけにはいかない」)で、現場へ強権的に介入していく姿勢を明言していたこと(「ボルトやナットを締め直す」)などが、批判されなければならないことは言うまでもない。
 籾井の発言については、菅官房長官が「個人としての発言。会長としては取り消したので問題ない」とし、橋下維新の会共同代表は「まさに正論だ」と踏み込んで評価した。
 とくに許しがたいのは安倍の発言で、「政府としてコメントすべきではない」と述べつつも、「新会長をはじめ、NHKの皆さんはいかなる政治的圧力にも屈することなく、中立、公正な報道を続けてほしい」などと語っている(衆院本会議での答弁)。
 この発言には、多くの人があきれ果てたはずである。二〇〇一年のETV2001「シリーズ 戦争をどう裁くか」、とくに第二回「問われる戦時性暴力」の番組改変が、当時「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」に所属していた安倍晋三や中川昭一ら右派議員によるNHKへの圧力、そして自主規制という流れの中で生じた事件であったことを、多くの人があらためて思い出したはずだ。自分が実際にかけた圧力は圧力ではなく、籾井発言を批判する人びとの声は「圧力」だという物言いは、あの石破の「テロ発言」と同様に厚顔無恥の極みである。
 ニュース映像で、籾井の、記者会見でのきわめて不遜な態度を見て、これらすべての、「不正義」(としかいいようがない)が繰り返し、しかも確信犯的に登場する根底に、やはりそれらを導く歴史観・国家観が強固にあると思わざるを得ない。籾井の発言も、はっきりとそのことにおいて問題とされなければならないだろう。
 番組改変事件でNHKらを訴えたVAWW─NETジャパンの後継団体であるVAWW─RACは声明で、「公共放送のトップがいい加減な事実無根の認識を公にばらまくことは断じて許されることではありません」「誤った発言、結果として被害者を冒涜する発言を行ったことを真摯に反省・謝罪し、即刻、NHK会長を辞任するよう、強く求めます」と要求している。また、日本軍「慰安婦」問題解決全国行動も、「籾井会長は、そうした一つひとつの調査・研究の積み重ねを無視し、公の場で持論を展開し、無知をさらけ出しました。戦時下・武力紛争下で女性に対する性暴力は、現在も世界各地で続いています。/しかし、他国の例を責任逃れの文脈で語る籾井会長の発言は、被害の連鎖を断ち切ろうとする日本軍「慰安婦」被害者たちの願いに真っ向から逆行するものです。/私たちは、日本政府が被害者たちの要求に応えることこそが、今も続く戦時下における性暴力の再発防止に役立つことだと改めて訴えます」と厳しく批判している。安倍政権のこの歴史認識、そして、それらを強権的に押し出していくことに何らためらいすら持たない国家主義的な姿勢を、決して許してはならない。私たちも、これらの認識を共にしつつ、安倍政権にさまざまな場所で抗していく行動につながっていきたいと考える。
 いま、私たちも参加して、〈いま問う「靖国問題」2・11反「紀元節」行動〉が準備されている。同朋大学教員で、「靖国合祀イヤですアジアネットワーク」で活動し、安倍靖国参拝違憲訴訟をも関西で準備されている菱木政晴さんを講師にお招きし、集会とデモをおこなう(同封ビラなど参照)。昨年一二月二六日の安倍靖国参拝、それが意味する侵略戦争と植民地支配の歴史の肯定、政教分離規定を公然と破壊するという意味での憲法破壊、「積極的平和主義」を唱える「戦争ができる国」づくりなどを問う行動としていきたい。
 「復古」的天皇主義と、強権的な国家主義を露骨に推進し、私たちの自由や生存権を踏みにじり、東アジアに緊張を創り出し、沖縄を新たな戦争の前線としてあらためて位置づけなおす安倍政権に、大きな抵抗の声をあげよう。当日の行動への参加と実行委員会への賛同をぜひお願いします。
 (北野誉)